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「BMD」と五所川原市
■車力基地から始まる「弾道ミサイル防衛」 (BMD)
2006年6月号 / 月刊 社会民主 613
社会民主党青森県連合幹事長 井上 浩
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一 反転攻勢の決意を示した社民党10回大会
社民党は2006年2月に開いた第10回定期全国大会で、現実に即した判断として、「現状、明らかに違憲状態にある自衛隊は縮小を図る」旨を明らかにした党宣言を決定した。
大会では青森県連合をはじめとした道府県連合提案で、在日米軍基地再編にかかわる日米の弾道ミサイル防衝(BMD)のため、米軍が新型警戒監視レーダー「]バンド・レーダー」を、つがる市(航空自衛隊車力分屯基地)へ配備し、さらに防衛庁が新型地上レーダー「FPSーXX 」をむつ市(空自大湊分屯基地)へ配備しうとしていること等に抗することを謳った特別決議を満場一致採択した。 本稿では、]バンド・レーダー配備強行として具体化してきたBMDをめぐる現状を整理するとともに現地での闘いについて報告する。
二 自治体への要請は日米政府の合意後
昨年12月2日、木村太郎防衛庁副長官と北原巌男防衛施設庁長官が三村申吾青森県知事と福島弘芳つがる市長に対して、次の理由から航空自衛隊車力分屯基地が]バンド・レーダー配備適地だと説明した。
理由は、
@1998年に三陸沖に着弾した北朝鮮のミサイル「テポドン」が青森県上空を通過した、
A日本海側で周辺に山などの障害物がなく、一定の広さの土地が確保できている自衛隊基地、
B移動のために必要な新たな道路工事が不要、
C陸海空の自衛隊と米軍の基地があり、全国的にも県民の(基地に対する)理解を得てきた地域。
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■註 北朝鮮のミサイル「テポドン」とは1998年8月31日に発射され、日本本土を越え三陸沖に落下した同国発表での人工衛星(光明星一号)打ち
上げのことであり、米国クリントン政権は当時、「失敗した人工衛星打ち上げ」との公式見解を発表した。
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さらに防衛庁防衛政策課は12月6日、「米軍が7日から19日にかけて、Xバンド・レーダー配備のために航空自衛隊車力分屯基地内を主体として調査を実施し、実施に際しては防衛庁が協力する」旨を発表した。
そして、米軍職員10数名程度が、
@電波環境特性の確認、
A通信手段・構成の確認、
B基地内の測量、
C基地内の諸設備の調査等 を行った。
つづいて12月7日には青森県議会総務企画常任委員会で青森県は、防衛庁から同月5日に受けた説明として、以下を明らかにした。
「米軍がつがる市富萢地区の航空自衛隊車力分屯基地内への配備を計画している新型移動式早期警戒レーダーXバンド・レーダー)システムの構成と態様は以下のとおり。
@電波を放射する「アンテナ・ユニット」、
Aデータ処理や指揮統制を行う「エレクトロニクス・ユニット」、
Bシステムの機器冷却のための「クーリング・ユニット」、
C商用電源の供給が不可能な場合(停電時など)に電源を供給する「パワー・ユニット」、の4ユニットで構成される。それ
ぞれのユニットは全長12m前後で、牽引車込みの重量30d程度のトレーラーに搭載して移動する。
この他にレーダーの特性として、使用周波数帯は8110.7ギガヘルツ(Xバンド帯、波長でいうとセンチ・メートル波:約3p
前後) で、遠方に電波を放射するために大電力が必要であり、回転せず前方の特定範囲に電波を放射する。」
昨年10月末の米軍再編「中間報告」発表前からこの問題を重視して県知事に対する反対要請を行っていた社民党県連合は、新型レーダー基地建設のための抜き打ち的な米軍による現地調査(12月7日〜19日)に抗議して、12月7日にはつがる市の福島弘芳市長及び三村申吾県知事にあてて米軍による現地調査即時中止と計画の撤回を求めた。しかし、知事の回答は国からの正式な要請がないので回答しないということだけ。
ところが防衛施設庁は3月3日、「米軍のXバンド・レーダー・システム」は「航空自衛隊車力分屯基地が最適な展開地」とした上で、つがる市長及び青森県知事に対し「理解と協力」を求めた。
それによれば、
@2006年夏〜12月末日までの間に展開を開始し、
A車力分屯基地内に約50〜60名程度常駐し、ローテーション維持のため総計100〜130名程度の規模とする、
B主要装備は、アンテナ、エレクトロニクス、クーリングのユニット各1台、
C分屯基地内の通称C地区に主要装備を展開する というもの。
社民党県連合は、先に紹介した12月7日に行った県知事への申入れで、
@住民の頭越しの米軍によるXバンド・レーダー配備のための航空自衛隊車力分屯基地内調査の中止を政府に求める
こと、
A米本土を守るため、新たに米軍レーダー基地をつがる市内に配備することは県内での米軍基地機能強化であり、基地
機能そのものが集団的自衛権行使となる。米軍によるXバンド・レーダー配備の撤回を政府に求めること
の二点を要請していた。
青森県はこれまでの歴代知事による引継ぎ事項として「現状を超える(米軍) 基地機能の強化は容認しない」との立場だった。
ところが、三村知事は配備反対を国に明言しない。その結果が3月30日、住民意思と無関係の日米政府決定という名での配備強行への追随であることに、強い怒りを感じる。
県民の求める米軍基地の整理・縮小とは正反対に、新たに津軽の地に米軍基地を新設し、海外からの脅威と住民負担を強いるこうした「合意」が地元住民や関係自治体の頭越しに行われたばかりか、自治体が政府に追随し、米軍が進駐するなどは言語道断である。
三 青森県からの本土の沖縄化を許さない
社民党県連合では、こうしたことから新年の旗開き集会と組み合わせて現地及び、後方支援が予想される米軍基地を抱える三沢で学習会を開いた。学習会での講師を務めた下道直紀さんの報告を紹介する。
「Xバンド・レーダーは全米ミサイル防衛計画(NMD構想)の一構成要素である。NMD構想とは、米国目がけて発射された大陸間弾道ミサイル(ICBM)を、大気圏外の宇宙空間で、地上発射迎撃ミサイルを使って破壊しようというもの。発射されたICBMを早期探知・発見するために宇宙に置かれた早期警戒衛星(DSP衛星)や宇宙配置赤外線衛星(SBIRS)の情報に基づき(したがって集団的自衛権の行使に抵触する)、ICBM弾頭の飛来方向、高度、速度を探知・追跡し、その弾頭の未来位置に向けて迎撃ミサイルを発射するために使われるのがXバンド・レーダーである。」
社民党県連合では3月9日に党西北五総支部と平和労組西北五地本を母体として「Xバンド・レーダー車力配備反対共闘会議(宮本哲雄議長)」を結成して、同25日には現地抗議集会やチラシ撒きなどの具体的な行動を進めてきた。
しかし、米本土よりXバンド・レーダーの機材が既に米軍三沢基地に空輸され、航空自衛隊車力分屯基地には、5月1日に開かれた日米安保協議委員会(2プラス2)での「在日米軍再編最終報告」決定以後は、何時でも搬入されようとしている。
車力ばかりか米軍三沢基地との一体的な運用が具体化し始める中で、米軍再編に絡む県内での米軍三沢基地と、陸・海・空各自衛隊基地絡みの再編が今後、急速に進むとともに、日米共同のBMD具体化の最先端県として、青森県は本土の沖縄化の最先端を走ることが予想される。
そこで、こうした日米軍事同盟化に抗議し、米軍三沢基地撤去・自衛隊基地縮小を広く県民にアピールしていくために党県連合では、青森県「日米軍事同盟化」反対闘争本部(本部長・渡辺英彦党県連代表)を4月26日に立ち上げ、闘う態勢に入った。
既に「同レーダー」システムの一部が「米軍三沢基地に搬入」とされるが、公表されている「同レーダー」の年内実戦配備計画は、米軍横田基地へ空自・航空総隊司令部(府中市)が移転し、日米ミサイル防衛拠点として「共同統合運用調整所」が設置されることに伴うものだ。
横田や車力で、統合的に部隊運用されて日米情報共有が進み、憲法が禁じる集団的自衛権行使になし崩し的に踏み込むこととなる。
そこで民主党まで巻き込み、防衛庁弾道ミサイル防衛 (BMD) 室の加野幸司室長が「ミサイル防衛こそが日本の専守防衛の証」とまで豪語するミサイル防衛とは何かについて以下、整理したい。
四 「日米同盟:未来のための変革と再編」とBMD
05年10月29日の日米安全保障協議委員会(2プラス2、町村外務大臣・大野防衛庁長官+ライス国務長官・ラムズフェルド国防長官)で合意された在日米軍再編に関する中間報告「日米同盟:未来のための変革と再編」は、06年5月1日開催の同委員会による最終報告「再編実施のための日米のロードマップ」で完結した。
この中間報告と最終報告での弾道ミサイル防衛に関する記述(外務省ホームページより抜粋)は以下となった。
まず、
中間報告「UI役割・任務・能力」 では
「2・役割・任務・能力についての基本的考え方
●日本は、弾道ミサイル攻撃やゲリラ、特殊部隊による攻撃、島嶼(しょ)部への侵略といった、新たな脅威や多様な事 態への対処を含めて、自らを防衛し、周辺事態に対応する。これらの目的のために、日本の防衛態勢は、2004年の防
衛計画の大綱に従って強化される。」、
「3・二国間の安全保障・防衛協力において向上すべき活動の例
●弾道ミサイル防衛」、
「4・二国間の安全保障・防衛協力の態勢を強化するための不可欠な措置
●弾道ミサイル防衛(BMD)BMDが、弾道ミサイル攻撃を抑止し、これに対して防御する上で決定的に重要な役割を
果たすとともに、他者による弾道ミサイルの開発及び拡散を抑制することができることを強調しつつ、双方はそれぞれ
のBMD能力の向上を緊密に連携させることの意義を強調した。これらのBMDシステムを支援するため、弾道ミサイル
の脅威に対応するための時間が限りなく短いことにかんがみ、双方は、不断の情報収集及び共有並びに高い即応性及
び相互運用性の維持が決定的に重要であることを強調した。米国は、適切な場合に、日本及びその周辺に補完的な能
力を追加的に展開し、日本のミサイル防衛を支援するためにその運用につき調整する。それぞれのBMD指揮・統制シ
ステムの間の緊密な連携は、実効的なミサイル防衛にとって決定的に重要となる。」
最終報告では、「実施に関する主な詳細」 として具体案のみが示される。
そこで「共同発表(2プラス2)」として「閣僚は、2005年10月の安全保障協議委員会文書に記されている両国間の役割・任務・能力に関する勧告に示されているように、弾道ミサイル防衛、両国間の計画検討作業、情報共有と情報協力や国際平和協力活動といった分野で、二国間の安全保障・防衛協力の実効性を強化し、改善することの必要性や、自衛隊と米軍の相互運用性を向上することの重要性を強調した。」 と補強された。
次に
中間報告「V兵力態勢の再編」 ではその具体案
「2・再編に関する勧告」 としてまず、
●航空司令部の併置 現在府中に所在する日本の航空自衛隊航空総隊司令部及び関連部隊は、横田飛行場において
米第5空軍司令部と併置されることにより、防空及びミサイル防衛の司令部組織間の連携が強化されるとともに、上記
の共同統合運用調整所を通じて関連するセンサー情報が共有される。」 ことを示す。
この点について最終報告では「実施に関する主な詳細」で、
「3・横田飛行場及び空域
●航空自衛隊航空総隊司令部及び関連部隊は、2010年度に横田飛行場に移転する。施設の使用に関する共同の全
体計画は、施設及びインフラの所要を確保するよう作成される。
●横田飛行場の共同統合運用調整所は、防空及びミサイル防衛に関する調整を併置して行う機能を含む。日本国政府
及び米国政府は、自らが必要とする装備やシステムにつきそれぞれ資金負担するとともに、双方は、共用する装備や
システムの適切な資金負担について調整する。」 として時期及び資金面の考え方が加わった。
さらに中間報告での直接の記述である
「●ミサイル防衛 新たな米軍のXバンド・レーダー・システムの日本における最適な展開地が検討される。このレーダー
は、適時の情報共有を通じて、日本に向かうミサイルを迎撃する能力、及び、日本の国民保護や被害対処のための能力を支援する。さらに、米国の条約上のコミットメントを支援するため、米国は、適切な場合に、パトリオットPACー3やスタンダード・ミサイル(SMー3)といった積極防御能力を展開する。」 はどう具体化しただろうか。
最終報告では
「5・ミサイル防衛
●双方が追加的な能力を展開し、それぞれの弾道ミサイル防衛能力を向上させることに応じて、緊密な連携が継続され
る。
●新たな米軍のXバンド・レーダー・システムの最適な展開地として航空自衛隊車力分屯基地が選定された。レーダーが
運用可能となる2006年夏までに、必要な措置や米側の資金負担による施設改修が行われる。
●米国政府は、Xバンド・レーダーのデータを日本国政府と共有する。
●米軍のパトリオットPACー3能力が、日本における既存の米軍施設・区域に展開され、可能な限り早い時期に運用可
能となる。」 とされた。
中間報告に付け加えられたのが「Xバンド・レーダー設置場所・運用開始時期」のみであることからも、「世界で一システムしかな
い」といわれる同レーダー配備への米軍の意気込みが感じ取れる。
五 日本政府が進めるBMDとXバンド・レーダー
さらに、日米両政府は97年に策定した「日米防衛協力の指針(ガイドライン)」を見直し「ミサイル防衛での日米の情報共有と共同作戦計画」の具体的な内容を07年にも示そうとしている。というのも、弾道ミサイル攻撃に対しては短時間の対応が迫られるため、情報共有と連携の熟度がカギを握る。本年度に立ち上がる米軍横田基地での日米ミサイル防衛司令部の実効化が急がれるのである。
そして、青森県内では「Xバンド・レーダー」配備につづき、今度は自衛隊が動き出す。防衛庁技術研究本部で弾道ミサイル追尾用の新型地上将来警戒管制レーダ(FPSーXX)の開発・試験を続けてきたが、「FPSーXX」を08年度から順に、鹿児島県・下甑(しもこしき)島、新潟県・佐渡、青森県・大湊、沖縄県・与座岳の全国四カ所に配備する計画が着手される。
憲法九条のもとで形づくられてきた「武器輸出禁止三原則」、「宇宙の平和利用原則」、「集団的自衛権の不行使原則」、「文民統制」など多くの原則を失うことと引き換えに進められる「BMD導入」によって得られるものが、三菱重工やレイセオン社(Xバンド・レーダーやパトリオットPACー3の製造元)など日米軍需産業への莫大な利益提供でしかないことに、怒りを禁じ得ない。
三沢〜車力〜大湊と、県土の全域で進められようとしているこの暴挙を、郷土を愛する県民のひとりとして許すわけにいかない。
そこで最後に、「安全保障と防衛力に関する懇談会」での審議から今の防衛政策の考え方を検証する。小泉政権が誕生してから顕著となった総理直属懇談会の一つである。
六 未来への安全保障・防衛力ビジョン
日本は、米国の推進するミサイル防衛(MD)システムの導入を03年末に閣議決定(12月19日「弾道ミサイル防衛(BMD)システムの整備等について」)した。
この閣議決定を受けて、小泉純一郎総理の下に荒木浩東京電力顧問を座長、張富士夫トヨタ自動車社長を座長代理に計10人を委員として、04年4月27日〜10月4日の約5ヶ月間に「安全保障と防衛力に関する懇談会」が13回開催された。
サブタイトルで「未来への安全保障・防衛力ビジョン」と銘打たれたのは、この懇談会により04年10月4日に小泉首相に答申された「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書である。
懇談会では、BMD関連で現在進められている考え方が全て示されているばかりか、現状認識や今後の方向性が詳しく書かれているので、少し長くなるが関係箇所を引用する。
@「政府においても、2003年12月の弾道ミサイル防衛システムの整備に係る閣議決定において、「同事業の実施にあたっ
ては、自衛隊の既存の組織・装備等の抜本的見直し、効率化を図る」旨を決定している」(13頁)
A「核兵器などの大量破壊兵器による脅威については、引き続き、米国による拡大抑止(自らの領土でない同盟国などに
ついても、これに攻撃があれば、反撃するとのコミットメントを明らかにすることによって、これへの攻撃をおこさせないよう
にすること)が必要不可欠である。さらに、大量破壊兵器とその運搬手段としての弾道ミサイルの拡散が深刻な事態をもた
らす可能性があるなど、従来の抑止が効きにくい状況があることから、米国の核抑止を補完する必要がある。このため、
弾道ミサイルからの脅威については、米国との協力の下に、有効な弾道ミサイル防衛システムを整備していかなければな
らない。」(7頁)
B「現在の弾道ミサイル防衛に関する日米共同技術研究が共同開発・生産に進む場合には、武器輸出三原則等を見直す
必要が生じる。」(21頁)
C「今後整備が進められていくミサイル防衛システムは、海自のイージス艦、空自の地対空誘導弾ペトリオット、自動警戒
管制組織(バッジシステム)等を活用するものであり、統合的な運用を行う必要がある。その際、同システムを現行の法制
度の下で有効に運用しうるか否か早急に検討の上、法改正を含め必要な措置を講ずるべきである。なおミサイル攻撃に対
処するため他に手段がなくやむを得ない措置としていわゆる策源地への攻撃能力を持つことが適当か否かについては、米
国による抑止力の有効性、ミサイル防衛システムの信頼性などの観点から慎重に検証するとともに、費用対効果や周辺諸
国に与える影響等も踏まえ、総合的に判断すべきである。」(28頁)
この懇談会報告書に基づき、「新たな指針」として04年末に閣議決定された現在の「防衛計画大綱」(12月10日「05年度以降に係る防衛計画の大綱について」)では、「弾道ミサイル攻撃に対応するため、装備、運用面など必要な体制の構築・強化に取り組んでまいります」(防衛庁長官談話)とされた。
より具体的には同日、閣議決定された「中期防衛力整備計画(05年度〜09年度)」「V1(1)弾道ミサイル攻撃への対応」の中で
「弾道ミサイル攻撃へ対応する機能を付加するため、引き続き、イージス・システム搭載護衛艦及び地対空誘導弾ペトリオットの能力向上を行う。ただし、平成20年度以降の能力向上の在り方については、米国における開発の状況等を踏まえて検討の上、必要な措置を講ずる。また、引き続き、自動警戒管制システムの改修を行うとともに、弾道ミサイルの探知・追尾能力を有する新たな警戒管制レーダーの整備に着手する。海上配備型上層システムを対象とした日米共同技術研究については、これを引き続き推進するとともに、その開発段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずる」 とした。
「防衛計画大綱」は言うまでもなく、日本の防衛戦略である。その
「防衛計画大綱」「V3 日米安全保障体制」 の中で
「---弾道ミサイル防衛における協力-----等の施策を積極的に推進することを通じ、日米安全保障体制を強化していく」
としたのである。
これを、米国の側からみれば
「北朝鮮と中国のミサイル攻撃の脅威に対処するため、日本は米国とともにミサイル防衛システムの推進に同意した。日米のミサイル防衛体制を確立するには、日本の集団的自衛権解釈がもっと柔軟になるよう求められている」 (ジェームス・アワー米バンダービルト大学教授、産経新聞4月20日号)というわけだ。
ミサイル防衛では、米本土やグアムなどを狙った弾道ミサイルを日本が迎撃すれば集団的自衛権行使となるので、防衛庁BMD 室の加野幸司室長は東奥日報社の取材に応えて「基本的には(迎撃は)できない」と答える。
現在の自衛隊法では迎撃対象を「現に日本に飛来する弾道ミサイル等」に表向き限定する必要があるからだ。
しかし、日本へ向かうのか米軍拠点に飛来するのか識別が事実上不可能なミサイルを撃ち落とした場合でも、集団的自衛権の行使に当たる。日本は今、米国の「ミサイル防衛」という名の巨大な軍事システム構築の格好の実験場とされつつ「日本防衛と極東の平和維持」を施設提供の前提とする日米安保条約から逸脱しつつ、MDを強行することによって日本の安全保障政策の原則を大きく変えようとしているのである。
さらに上記Aについて「大綱」では 「弾道ミサイル攻撃への対応」として
「弾道ミサイル攻撃に対しては、弾道ミサイル防衛システムの整備を含む必要な体制を確立することにより、実効的に対応する。我が国に対する核兵器の脅威については、米国の核抑止力と相まって、このような取組みにより適切に対応する。」 とされ、米国との間で今日の「2プラス2」合意へとつなげられる内容が示された。
また上記Bについても、同時に発表された「内閣官房長官談話」で
「弾道ミサイル防衛システムに関する案件については、日米安全保障体制の効果的な運用に寄与し、我が国の安全保障に資するとの観点から、共同で開発・生産を行うこととなった場合には、厳格な管理を行う前提で武器輸出三原則等によらないこととします。」 とされた。
この際の防衛長官会見では「(武器輸出三原則等によらないことについて)防衛大綱に載せるのか、官房長官談話(閣議決定不要)にするか」議論した結果、長官談話で「MD研究、MD開発そして生産ということについては緩和する」方針を示すこととしたという。
しかし、昨年05年末には政府が「弾道ミサイル防衛(BMD)用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発」に着手することを安全保障会議及び閣議でそれぞれ決定(05年12月24日)したことにより、佐藤内閣に始まり、三木内閣で確立された武器輸出三原則の空洞化が決定した。
最後に上記Cについては、まず統合的運用について「防衛庁設置法等の一部を改正する法律」が06年3月27日に施行され、自衛隊の指揮系統の一本化が初代となる松崎一統合幕僚長のもとで始まった。幕僚長が語るように「窓口を一本化し、ミサイル攻撃など新たな脅威に何時でも対処」というわけだ。
バッジシステムについても
「MD計画では全国7ヵ所の従来型対空レーダー(FPSー3)を改良。第一段階ではこれにバッジシステムをつなぐ基本システムを設計、製造し、2008年度内に配備する。第一段階と一部並行する07年度からの第二段階では、監視機能を高めた新型の対空レーダー(FPSーXX)と直結するシステム設計に着手、09年度内に配備する。第三段階は米国側のミサイル防衛システムの開発動向に合わせ、09年度から三年間で進める予定」(共同通信06年3月12日) という。
さらに同じ法律改正では「第82条の次に次の1条を加える。」とされ、現場部隊判断でのMD行使に道が開かれた。
「(弾道ミサイル等に対する破壊措置)第80条の2 長官は、弾道ミサイル等(弾道ミサイルその他その落下により人命又は財産に対する重大な被害が生じると認められる物体であつて航空機以外のものをいう。以下同じ。)が我が国に飛来するおそれがあり、その落下による我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊に対し、我が国に向けて現に飛来する弾道ミサイル等を我が国領域又は公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。)の上空において破壊する措置をとるべき旨を命ずることができる。
2 長官は、前項に規定するおそれがなくなつたと認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、速やかに、同項の命令を解除しなければならない。
3 長官は、第一項の場合のほか、事態が急変し同項の内閣総理大臣の承認を得るいとまがなく我が国に向けて弾道ミサイル等が飛来する緊急の場合における我が国領域における人命又は財産に対する被害を防止するため、長官が作成し、内閣総理大臣の承認を受けた緊急対処要領に従い、あらかじめ、自衛隊の部隊に対し、同項の命令をすることができる。この場合において、長官は、その命令に係る措置をとるべき期間を定めるものとする。
4 前項の緊急対処要領の作成及び内閣総理大臣の承認に関し必要な事項は、政令で定める。
5 内閣総理大臣は、第一項又は第三項の規定による措置がとられたときは、その結果を、速やかに、国会に報告しなければならない。」
関連して「第93条の次に次の1条を加える。」とされた。
「(弾道ミサイル等に対する破壊措置のための武器の使用)
第93条の2 第82条の2第一項又は第三項の規定により措置を命ぜられた自衛隊の部隊は、弾道ミサイル等の破壊のため必要な武器を使用することができる。」
ここまでは、前節の在日米軍再編と絡んで既に現実のものとなりつつある。恐ろしいのは、「将来の話」とされていた上記Cの「策源地への攻撃能力を持つことが適当か否か」についても動き始めたことである。
自民党の宇宙平和利用決議等検討小委員会では、07年度の通常国会に議員立法で「宇宙基本法(仮称)」を提案し、宇宙空間の軍事利用に道を開こうとする。基本法制定で大陸間弾道弾 (ICBM)に道を開こうというわけだ。
第61国会衆議院本会議(1969年5月9日)での「わが国における宇宙の開発及び利用の基本に関する決議」では、
「わが国における地球上の大気圏の主要部分を超える宇宙に打ち上げられる物体及びその打ち上げ用ロケットの開発及び利用は、平和の目的に限り、学術の進歩、国民生活の向上及び人類社会の福祉をはかり、あわせて産業技術の発展に寄与するとともに、進んで国際協力に資するためにこれを行うものとする」 とした。
守らねばならない。 |
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